K

地面の景色

雨の中

自転車で傘をさしながら帰ってた

傘は背中のリュックがぬれないようにぴったり後ろにかまえていて

おかげでズボンのふとももの部分に雨があたりじとっとして気持ち悪かった

パチンコ屋の立体駐車場の前を通ろうとすると

車が何台か出てきていて足止めをくらった

そこにいた50代近くのおじさんが

レインコートを着て大きな声で車を誘導していた

数秒後、僕に気づいたのか

手に持っていた赤く蛍光色に光る棒で

車をとめ

通してくれた

「どーもー ありがとうございます」

と軽く会釈をすると

おじさんが笑顔いっぱいにしたような声で

「いつもご迷惑かけてすみません、気をつけてお帰りください」

と頭をさげているのが見えた。


しばらく自転車を走らせて、

おもった

いつも変わらない同じような作業の中では

少しの変化が喜びになる

または

そういう人の少しの配慮に気づけるようになる

僕の閾値は広がりすぎているんじゃないか

小さなメッセージを感じ取れていないんではないか

とおもった

”同じ帰り道だといっても同じ景色とは限らない

それだけではいけないんだろうか

それだけだからダメなんだろうか(映画スカイクロラより)”