鈍行電車の昼過ぎで
藤沢から湘南台への鈍行電車
疲れていてクタクタな僕の気持ちを
あざ笑うかのようにびっちり詰まった電車のソファー
みんな気持ちを僕に悟られないように見ないふりをしていると感じてしまう
その車両の真ん中のドアごしにポツンと一人
ほほをガラスにつける
ひんやりとした感触が気持ちいい
ぼーっと窓越しに景色を見ると
流れる景色と時が止まった空間のタイムマシンのように思える
その景色の中に
緑の農道から
こちらを眺める五歳くらいの男の子
短パンにTシャツ、つばのついた帽子
隣には背丈をあわせるように座るおばあちゃん
拳をしっかりにぎりしめこちらをじっと見ている
その絵を見た瞬間
どこか得した気分で
立っている僕だけに見えるこの上ない作品の気がして
立っていることが苦痛ではなくてむしろほのかな幸せに変わった
だから明日もがんばろうと思ふ
もう初夏やわ